「掲示板でのシミ抜きの質問」 2006/6/22
先日、●●さんが、掲示板に『毛100%ベージュセーターの食べこぼしの黄変 』という投稿をしていました。
私の取り違えかもしれませんが、話がごっちゃなってる気がしますので… ちょっとこちらで、取り上げてみます。
シミ抜きの事を考えると、前半も少し課題がある事を書かれているのですが、一番の問題部分をコピーしますネ!
今度はシミナックスを付けてみます。すると、付けて5秒くらいで熱をかけてもいないのに赤っぽく変色してしまいます。
もとのシミの色より濃くなってしまいました。毛のものを漂白しようとしている私が間違っているのでしょうか?
どういう処理が適切なんでしょうか?トリオを繰り返すこともやってみたのですが、だんだん周りのほうが先に薄くなってしまいます。
シミナックスをつけて、熱もかけていないのに、5秒ほどで赤っぽくなる… もとの色より濃くなる…
これが、問題部分ですネ!
●●さんの表現通りだと… シミナックスをつけて、要は過水をつけて、シミが濃くなった…
これは、その生地自体が反応しちゃっているケースです。
99%以上の確立で過炭酸ソーダや、過水+アンモニアでも、同じことが起こるでしょう。
こんなケースないですか?
もちろん、頻繁にはありません。珍しいです。イレギュラーです。
でも、漂白をしていると… あれ?赤くなる!って、体験、私は、たくさん処理をした経験でいうと、幾つか体験しています。
たいてい赤くなります。そして、漂白剤をつけると逆にシミが濃くなる…
これはネ… その生地が漂白に合わないんだ… 原因は何か分りません。
おそらく繊維の加工剤の何かが反応していると思われますが、ハッキリとした原因は追究できていません。
ただ、実際にそういうモノがあるんです。
私が過水+アンモニアスプレーのマニュアルで、スプレーをした時、色が濃くなるのは要注意だ!としている部分のことです。
すぐに濯げば、大丈夫ですが…
そのまま漂白処理をすると… 確実に染色が壊れます。
こんな時は、濯いで、サビ取りをかけ… 赤っぽくなっているなら、弱いハイドロ処理です。
上手くなると、少しシミが濃くなりますが、少しだけ過水を反応させて黄変を分解させ、その後、濯いで、サビ取り、ハイドロとなります。
過水のコントロールが下手だと、色が沢山壊れます。
わざと、すすぎの後にサビ取りとしています。
普通は、すすぎの前にサビ取りですが… 過水でイレギュラーが起こっている時は、ショックを和らげるために、濯ぎを一回入れます。
ちなみに、初期段階なら、サビ取りだけで、赤みがとれるケースがあります。
私が推察するに… 今回の件は… すすぎや中和じゃないんです。
生地そのものが過水に反応したケースだと推察されるからです。
シミナックスを付けてみます。すると、付けて5秒くらいで熱をかけてもいないのに赤っぽく変色してしまいます。
シミナックスをつけて、5秒後に起こっているのが根拠です。
●●さんは、よくシミの細かい変化を見ています。だから、躊躇したのだろうと、私は、思っています。
しかし、●●さん、ちょっとシミ抜き剤の使い方に課題があります。投稿の前半部分にその症状が出ています。マニュアルを読み返してみましょう!
文面から状況を推察すると過水で生地が反応したと思えます。
だから、漂白処理の後、漂白剤を中和・還元するのに、サビ取りをかけ、そのサビ取りの“酸”のきつさで赤くなるケースと異なります。
サビ取りをかけ、生地が赤くなったのなら(これは、ちょくちょくありますネ)、これは、“酸”の影響で染料が変化したので、この時はアンモニア水をかけると収まります。
しかし、過水で赤く反応したなら… アンモニア水をかけると… さらにひどくなり、完全に地色を破壊してしまう可能性が大です。
まれに…アルカリだけで、赤くなるモノもあります。
この時は、酸性のモノをかければいいです。
また、モノによっては、カメレオン染料といって、酸でもアルカリでもゴロゴロ色が変わる厄介なモノもありますし…
ややっこしいですが、イオン性だけで色が変わる、超厄介なモノもあります。
とにかく厄介なモノがあります
ウールで、過水で赤くなるモノ… 私の経験では確かに茶系〜グレー
ほら、白の綿でも過水で赤く厄介なモノもありますよネ!
これ以外にもあるかもしれません。
とにかく、過水と反応して、シミが濃くなったり、赤っぽくなってしまう厄介なモノです。
基本的には、レアケースです。
でも、衣類(繊維)を作る時、どのような薬剤を使われているか… これは分りません。アパレルメーカーに問い合わせても、この件は、「?」です。
これは、経験して身体で覚えていくことと…
赤くなった時のリカバリー方法を覚えておかなければなりません。
赤くなったら、サビ取りを加熱する場合もあります。その後、ハイドロですネ!
そうそう、過水とアンモニアスプレーには、中和入りません!
これ、私をやっかむ方が、一生懸命、「これに中和がいる」とか、「どうなっても知らんで〜」とかを、言っています。
しかし、数万着以上の実績があるので… もし、これで事故があるなら、もっと大騒ぎになっているでしょう!
ただし、マニュアル外のことをした場合は知りません。
過水がアンモニアによって、不安定になり分解され… 乾いた時点で、もう残っていません。
もちろん、色がはげる染色の弱いモノもありますが… 他の漂白方法より、シミ抜き事故が圧倒的に少ないでしょう!
ウールに漂白はできるのか?
できますよ! だって、シミ抜きが上手い人はみんなしているんだもの…
脆化は、過炭酸ソーダなど、金属を含んでいるモノが入っている場合、ものすごく起きます。アルカリ=脆化でないので、念のため。
過水+アンモニアでは、ゼロとは言いませんが、ほとんど発生しません。だって、あれだけ、放置とかして、しかも何回も処理して、脆化より染色の壊れの方が気になっているでしょう!
これが、過炭酸ソーダを使うと… ウールが脆化しやすいため、生地の脆化具合も気にしないといけません。数回繰り返して処理をするとダメです。
シミナックスは、脆化しないように工夫していますから、まず大丈夫でしょう。脆化しないアルカリを使っています。
ただ、なんでも例外があります。だから100%大丈夫とは言っていませんが、そりゃ、過炭酸ソーダを使うより、圧倒的に脆化しにくいです。
極端にいえば、水だけで、脆化した黒いウールのセーターがありました。水でそのフラッシュで濯いでいるだけで、生地がやせてくるの… まさか、こんなことで、やせると思わなかったので… これは弁償になっちゃったという悔しい思いでがあります。
それから、酵素ね…
酵素はいろんな種類があります。過水に混ぜると、たいてい過水が活性化しますので、漂白力があがります。
でも、別に酵素で活性化する必要もありませんので、私は採用していません。アンモニアで浸透性が上がる方が、データを取ると効率が良かったからです。
過水は、不安定にさせれば、漂白力が上がります!
いろんな方法を検討した上で、その中で一番効率のいいものを紹介しています。
だから、自信をもって、今のやり方を推し進めてください!
ただ、カタラーゼという酵素は、一瞬のうちに過水を分解してしまうので… 過水の反応を止めるという意味では、面白い使い方ができますが… ま、そこまでは不要か…
そして、ほとんどの酵素が、窒素を食っちゃうので… 染料が壊れます。というか、染料が壊れなきゃ、おかしいんです。
一番こわれるのが、体感的には、緑色ですが…
私、クイック酵素で、ダーク系の茶色のスラックスの色を壊したことがあります。
これが、一番最初にクイック酵素を使った時ですが… なんか、塗ったら「あれ! これなんか、今までの酵素とちゃうゾ!」と思ったら、案の定… 染料がつぶれている…
かけた色は赤でしたから、別に緑がだけが壊れるのではないです。
過水で青が一番こわれますが赤も壊れるように、酵素でも色は壊れます。
あれ?酵素で色が壊れないよ!って感じた方は、弱い酵素を使っているからです。
これだけのことです。
クイック酵素はきついからなぁ〜、だから、マニュアルどおり薄めて使ってネ!
しかも、反応速度が速めるために浸透剤まで入っているから…